前回までのあらすじ
ドイツのコ―ブルグからヴィクトリア女王の従弟のアルバートと兄のエルンストがやって来ました。
真面目で堅物のアルバートとヴィクトリアとの間は、最初はぎくしゃくしていましたが、ピアノの連弾をしたり、ワルツを踊ったりするうちに、なぜかヴィクトリアはアルバートに惹かれ始め、最後は自分からプロポーズするのでした。
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ヴィクトリア女王 第5話のあらすじ
婚約を発表するヴィクトリアとアルバート、周囲には当然という感じで祝福されます。
やっと仕事に取り掛かれると、レオポルド叔父が、アルバートの処遇についてメルバーン首相に案を出します。身分、年金など、きちんと決めておきたいようです。
結婚式は、6週間後と決まりました。
下の階の使用人たちもウエディングケーキが間に合わないなど、ぶつぶつ言いつつ準備に取り掛かるのでした。
アルバートは一度、コーブルグに帰ります。出迎えたコ―ブルグ公の父は、大金持ちのイギリス王室の婿になる息子に手放しで喜びます。露骨です。
が、その間にイギリスでは、結婚後のアルバートの身分や処遇、年金などについて国会で議論されることになりました。
ベルギー国王のレオポルドは、20年前に亡くなったシャーロット王女の婿君だったのですが、なんとその結婚のときに決められた年金を現在もイギリス政府からもらい続けていて、そのお金で愛人も養っているという話も明らかになっていました。
ヴィクトリアがひとりで枢密院へ赴き、アルバートとの結婚を発表すると、アルバート王子はカトリック教徒ではないのかとウェリントン公爵がいちゃもんをつけ、ヴィクトリアは怒りを隠せないのでした。
アルバートは政治にも関心があるらしく、結婚してイギリス貴族になれば貴族院議員となって政治に参加できると考えていたようです。
しかし、議会の反対でそれもかなわず、おまけに側近として、メルバーン首相の秘書官をあてがわれました。
なにひとつ思い通りにならず、側近も自分で選べないことにも釈然としない面持ちでした。
そして兄エルンストとフェンシングの練習でうっ憤を晴らすアルバートでした。
ヴィクトリアは自分の意志でできるせめてもの騎士団勲章(ガーター勲章)を、アルバートに贈ります。
ヴィクトリアは、女官たちと結婚式の相談もしています。衣装は純白でダイヤのティアラではなくオレンジの花の冠をかぶりました。若き女王の結婚式なのに、意外に質素でつつましい感じでした。
ふたりでウエディングケーキを切り、最初にお母さまへとケント公夫人に持って行く婿養子のアルバートに泣かされます。
結婚式後、アルバートとウィンザー城へ行く前に、バッキンガム宮殿でメルバーン首相と二人で会ったヴィクトリアは、彼に別れを告げて、走り去っていきます。
その後ろ姿をいつまでも見送るメルバーン首相でした。
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ヴィクトリア女王 第5話の感想
国王と結婚した女性は(貴賤結婚とかは除いて)、王妃、クイーンになれますが、女王と結婚したからと言って、その夫は国王になれるのではないということでしょうか。年金や身分だのと、ロマンチックとは程遠い話になってしまいました。
もちろん実際にも当時から、一文無しのドイツの王子とは言われていたようですが、ご本人たちの間で、ああまで露骨に話されるだろうかと、あまりにアルバート公が気の毒に思えてしまいました。
アルバートの「年金が少なければハンカチも買えない」とか、ヴィクトリアのセリフの「どうしてそんなに年金を欲しがるの?愛人を囲うためなの?」というのも、あまりにはしたなすぎて涙が出るほどです。
これはやはり、シュトックマー男爵という人物がこのドラマには登場しないためでしょう。この人物は、レオポルド叔父の特使としてヴィクトリア女王とケント公妃の相談役も務め、この問題についてアルバート公の代理として交渉していたのでした。
しかし、21世紀の我々にはちょっと理解しがたいことではありますが、身分的に色々決めておくことは重要だったようです。
アルバート公は、(ヴィクトリア女王の父方の叔父たちの反対によって)将来生まれるヴィクトリア女王との間の息子、皇太子よりも低い序列になるとか、宮中に住んでいないとわからない不自然さ、不自由さが出来てしまうのですね。
現に、この数十年後、ヴィクトリア女王の息子の嫁たちの間で、結婚前の身分によって序列が争われたのです。
ロシア皇帝アレクサンドル2世は、デンマーク王女のアレクサンドラ皇太子妃よりも、次男エジンバラ公夫人である娘のマリア大公女の方が高位であると主張していました。
その後、エジンバラ公がアルバート公の兄エルンストの後継者としてコ―ブルグ公になったので、ヴィクトリア女王即位60年式典では、皇太子妃より上位になったそうです。
それにしても女王の結婚式も、現代のようにセントポール寺院とかウエストミンスター寺院で大々的に行われて、パレードもあるのかと思いきや、セントジョージ宮殿の礼拝堂でかなり小規模な身内だけの結婚式でした。
しかも、パレードもなく、ハネムーンもなし。ウィンザー城への数日間だけというのは、意外でした。
が、これはジョージ三世の王女で伯母に当たるヘッセン=ホンブルク方伯夫人が1月に亡くなって服喪中だったことによるのではと思います。
尚、ヴィクトリアがアルバートに授与したのを、ガーター騎士団勲章と訳されていましたが、ガーター勲章の方が通りがいいのではないでしょうか。イギリス最高位の勲章ですよね。
それと、実際のヴィクトリア女王は、アルバート公をただ側にいてくれるだけでいい存在として選んだということでしたが、メルバーン首相が、アルバート公はなかなか頭が良く有能なので相談相手にするようにと助言し、女王もそれを受け入れ、政治向きのことについて、アルバート公に相談するようになったと伝記本にありました。
このドラマでは、メルバーン首相のヴィクトリア女王への影響力をかなり重く描いているのに、このことについては「アルバート王子は、なかなか誠実なお方」「あら、そうなの?」程度の会話でした。
毎回毎回、なんだかなあと思うことが増えてくるような、期待しているのに、ちょっと残念なドラマではあります。